カオス発振器の完全結合系における自己スイッチングの同期現象 <Abstract> カオス発振器にダブルスクロールアトラクタが生じている状態では, アトラクタは二つの部分状態空間を切り替わる動作をしている.カオス発振器の結合系に生じる外力によらずカオス解が二つの部分状態空間を時間的にカオス的に切り替わる動作, つまり自己スイッチングの振舞いを調べることは, 各発振器に生じるカオスが非同期状態で互いに引込みを生じない無秩序状態にあるときのシステムに生じる振舞いを明らかにするため, また, 実物理系における時空現象を明らかにしていくためにも重要である。本論文では, N個のカオス発振器の完全結合系に生じる自己スイッチングの振舞いについて調べる.対象とする系では, 各発振器のアトラクタが, 存在する部分状態空間を同時に切り替わるという従来報告例のない「自己スイッチングの同期現象」を観察することができる.自己スイッチングの同期現象は, カオスが非同期状態にあるとき観察される.自己スイッチングの同期現象は, 電子回路システムにおいてカオス非同期という各発振器間の無秩序性の中に自己スイッチングの同期現象という秩序性が同時に存在することを示した初めての現象である. |