指向性アンテナを用いた無線マルチホップネットワークにおける難聴問題を回避するMACプロトコル
長崎 篤, 関屋 大雄, 小室 信喜, 阪田 史郎
電子情報通信学会 情報ネットワーク研究会, vol.109, no.449, pp.371-376, Feb., 2010. [pdf document]

<Abstract>

無線マルチホップネットワークにおいて, 指向性アンテナによるビームフォーミングを利用し, 空間利用効 率を向上させる通信方式が注目されている. しかし, 指向性アンテナを用いた通信では, 隠れ端末問題や難聴問題によ り, スループットが制限される. 本稿では, 指向性アンテナを用いた無線マルチホップネットワークにおいて, 隠れ端末 によるパケット衝突, 及び難聴問題による送信待機時間の増加を軽減するMedium Access Control (MAC) プロトコ ルを提案する. 提案方式では, 通信を開始する前に, 送信端末はあて先端末の属するアンテナセクタで2 つの狭帯域信 号(Pulse/Tone) の交換を行い, あて先端末が他の端末と通信中であるかどうかを判断する. これにより, 隠れ端末と のパケット衝突を軽減する. さらに提案方式では, Pulse/Tone の交換は極小時間で終了するため, Pulse 送信の失敗は 主に難聴問題に起因する. したがって, Pulse 再送時に, Contention Window (CW) を増加する必要がない. これによ り, 難聴問題に起因するバックオフ時間の増加による無駄な送信待機時間を軽減することができる. 計算機シミュレー ションにより, 提案方式が隠れ端末によるパケット衝突を軽減し, さらに難聴問題による無駄な送信待機時間の増加を 抑制することでスループットが向上することを確認する.