マルチパスTCP

背景 - Background -

4G/LTE、5G、6G、IoTといったモバイル無線ネットワーク社会では、デバイスが複数のインターフェースを持つことが一般的になってきています。 たとえば、4G/LTEとWi-FIが利用できるスマートフォンや、さまざまな無線技術を持つIoTゲートウェイなどがあります。 また、このようなネットワークでの通信には、これまでTCP/IP(インターネットプロトコルスイートのひとつ)を使用してきました。 TCP/IPの仕様上、送信側から受信側へのデータ転送に使用できるパスの本数は1つのみとなっています。 したがって、デバイスは1つのインターフェースしか利用することができません。

マルチパスTCP - (MPTCP) -

マルチパスTCP(MPTCP)はTCPの拡張技術であり、 デバイス上のアプリケーションが複数のパスを同時に使用できるようにします。 複数のパスの同時使用により、 MPTCPは帯域幅(通信に使用する周波数)の増幅を実現します。 さらにMPTCPは、パスに障害が発生した際も、通信の状態を安定させることできます。

研究課題 - Research Topics -

MPTCPはその利便性から、 すでに多くのプラットフォームに導入されています。 しかし、 MPTCPは比較的新しい技術であるため、 未だに普及するまでに至っていません。 そのため、 その他の最新の技術と組み合わせた取り組みは未だ行われていません。 そこで本研究室では、 MPTCPを様々な新しい技術に導入し、 性能の評価を行っています。 具体的な研究課題は次のようなものが挙げられます。

1. IoTルーターにおけるMPTCP

IoTルーターはIoTデバイスとサーバー間でデータの中継とルーティングを行うデバイスです。 IoTのネットワークにおいてIoTルーターは重要な役割を担っています。 多くのIoTデバイスがひとつのIoTルーターに集中して接続した場合、 混雑によりネットワークの性能が低下してしまいます。 そこで、 混雑を解消するだけの高いスループットと耐障害性を導入すべく、 IoTルーターとサーバーの間にMPTCPを実装しています。 また、設計したネットワークにおけるMPTCPの評価を行っています。

2. ユーザー端末の設定変更が不要なMPTCP

前述のとおり、MPTCPはTCPの拡張技術であり、MPTCPを使用した通信を行うには、通信するユーザー端末と宛先のデバイス(サーバーなど)が、MPTCPを利用できるように設定しなければなりません。 公平性に基づき、すべてのユーザー端末がMPTCPを利用できるようになるには、スマホやタブレット、パソコンなど、多くのデバイスに手を加える必要があります。 そこで本研究室では、マルチパス通信機能をネットワーク中継機器(スイッチやアクセスポイントなど)に施すことで、ユーザー端末はそれらに接続するだけでマルチパス通信を可能にする技術を実装しています。 具体的には、Software-Defined Networking(SDN)におけるデータプレーンを直接プログラムすることができる言語、 Programming Protocol-Independent Packet Processors(P4)を用いてマルチパス通信機能をネットワーク中継機器に実装し、実験、評価を行っています。

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