知的IoTネットワーク

背景 - Background -

IoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)は人間の能力(IoTは神経、AIは脳に相当)を飛躍的に拡張する技術です。 「未来投資戦略2018」においても、Society5.0を実現する中心技術として位置づけられており、 これらの技術の活用により従来の大量生産・大量消費型のモノ・サービスの提供ではない、個別化された製品やサービスの提供を実現し、 様々な社会課題を解決でき、大きな付加価値を生みます。

IoTは多種多様なセンサを無線通信でネットワーク化することにより、膨大なデータの自動的かつ継続的な収集を平易かつ安価に実現する技術です。 しかしながら、増大し続けるデータを処理するために、データセンタ毎に発電所が必要となるくらいの膨大な電力を消費しており、 環境・省エネルギーの意識の高まりに逆行している側面があります。 さらに、IoTの無線通信容量の限界により、データサーバに送信できるデータ量が限界に達しようとしています。これをデータ爆発と言います。










Wireless Brain-Inspired Computing(WiBIC)

ところで、生物の脳はパルス信号を授受することで、超高度な情報処理を極めて低いエネルギー消費で実現できています。 それを模倣したスパイキングニューラルネットワーク(Spiking Neural Network:SNN)に次世代AI(Artificial Intelligence)としての注目が集まっています。 ここで、情報を収集する「IoTネットワーク」とパルス列でニューロン間の情報伝達を行う「SNN」を「ネットワーク」の元に統合した無線SNNを提案し、それを基礎技術とする次世代情報処理プラットフォーム「WiBIC」を提唱しています。 WiBICは、IoTデバイスにニューロン機能を搭載することで、取得した環境情報をその場でパルス情報に変換し、知的情報処理を実現します。超低消費電力、電力供給を含めた完全無線化による移動度の高さに特徴を持ち、さらに学習により無線ネットワーク自身が多様な機能を獲得できるため、設置場所に制限されず低コストで多様な知的環境(Ambient Intelligence)システムを実現することができます。


研究課題 - Research Topics -

上述のように提唱したWiBICを実現するための研究開発を進めています。 第一段階として、回路の再構成が可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)でスパイキングニューロンを実装しました。 そして、FPGAニューロンで発火したスパイク信号をIoT無線デバイスを用いて、他のニューロンと相互に通信させます。 このとき、FPGAニューロンとIoTデバイスにセンサを装着させると、センサで観測したデータをその場で処理することができ、WiBICを実現できるはずです。

1. 無線スパイキングニューラルネットワークの実現

無線化による利便性の獲得がWiBICの利点であり、そのためにはシステムの完全無線化が求められます。 そこでFPGAニューロンを結合する無線通信方式の開発が重要な研究課題となります。 さらに、各デバイスへ電力を供給するための無線給電システムの開発を進めます。 このように、WiBICに関する研究は、通信、電源の研究いずれの知識を必要とする統合的研究課題となります。

2. 在室人数推定システムの開発

室内人数推定システムには、建物の空調や照明の管理を通じた EMS(Energy Management System)、 不審者侵入検知による防犯、さらにはコロナ禍においてにわかに注目されている人の密状態の感知など多様な波及効果が期待されます。 しかし、設置の容易度、コスト面で高い壁があるのが現状です。 そこで、WiBICにリザバコンピューティングを活用した環境情報による在室人数推定システムの開発を目指しています。

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