無線電力伝送

背景 - Background -

「無線化」による利便性の向上は誰しもが体感しているところだと思います。たとえば、リモコンがあるため、我々は容易にエアコンやテレビをコントロールすることができます。 ICT関連を見ても、インターネットの接続か無線化されたことによってスマホが登場し、我々の生活は一変しました。 パソコン周りをみても、キーボード、マウスなどが無線化されることにより、機器の使い勝手は大幅にあがっています。 このようなあらゆる電気機器が無線化される中で、最後に残った「有線」が電力を与えるための電線であると言われています。

例えばノートパソコンを充電するためには最終的には線でコンセントと接続しなければならないですし、デスクトップパソコンに至っては、いまだに電線がごちゃごちゃしている状況です。 さらに注目すべきは今、さまざまなものが「電気化」している世の中の流れです。 自動車は10年後にはEV(電気自動車)が当たり前になるでしょうし、飛行機も完全電気化が検討されています。そうすると、これまで以上に「電力の与え方」の重要性が増していくことが予想されます。

電力送電の無線化を目指すものが「無線電力伝送(WPT)」システムです。iPhoneの「置くだけ充電」や、電子歯ブラシの充電などは身近な無線電力伝送の例です。 今後、テレビ、掃除機などの家電、EV(電気自動車)向けなどターゲットに特化したWPTシステムの開発が求められます。 電力を無線で送る方法として、磁界(コイル)を用いる方法、電界(コンデンサ)を用いる方法、電磁波を用いる方法がありますが、当研究室では主に磁界を用いる方法に注目します。 このとき、電力伝送システムの「小型化」を考えたとき、コイルを用いることから、高周波化が求められます。このとき、我々の「高周波電源」の技術が応用できるのでは?という発想につながります。 実際多くの共通点があり、その知見を活かすことで新しい技術を提案することができるはずです。


研究課題 - Research Topics -

当研究室では高周波無線電力伝送システムの研究開発を進めます。 これまで研究室として蓄積してきた高周波電源技術、特にE級スイッチングを活用することにより、 高周波の中で、低損失に電力を送信するための基盤技術の確立を目指しています。具体的な研究課題として次のようなものが挙げられます。

1. IoT機器向け充電

IoTデバイスは電池駆動を基本としており、電池が切れたらそのまま捨てることを前提にする場合もあります。これは、電池交換、充電するための面倒を考えるとコスト的に見合わないためです。IoTデバイスは「ばら撒いて」使うことを前提としており、化学物質を含んだ電池を含むデバイスがそのまま放置されると自然環境に悪影響を与えることもありえます。もしWPTシステムが開発できればこの問題は抜本的に解決できます。 当研究室では、ドローンを用いたWPTシステムの実装を目指しています。ドローンへの充電に関する研究は多く検討されているのですが、ドローンの移動性を無線給電に有効活用しようという研究はほとんど検討されておらず、これができると、空間的制約を排除した給電システムの実現につながります。

2. マルチホップ多出力システムの実現

例えば机の上に大きなコイルを置いたしましょう。このとき、机のどこにおいても安定して充電できるようになるととても便利なことがイメージできると思います。 家の壁にコイルを埋め込んでおけば、壁掛けテレビやエアコンに電源ケーブルが不要になり、家のレイアウトに自由度が増します。また、複数のコイルを介して電力を送れるようになれば、 送電できる距離を延伸することができ、例えばロボットアームなど産業用ロボットへの給電を実現します。ここでの問題として、コイルの内部では、その場所により磁界の強さがまちまちであり(終身ほど弱い)、 場所によって給電能力にばらつきがあるという問題が生じます。 そこで、当研究室ではこれら多ホップ、他出力WPTシステムの数理モデルを導出し、そこから得られる知見からどこにおいても安定した電圧で給電可能なシステムの構築を目指しています。 そのために高周波電源のテーマで紹介した「負荷非依存動作」の適用可能性などを検討します。



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